株の損失を取り戻そう

底の見えない株価と為替

リーマンショック破に始まった一連の金融危機が、世界中に広がっています。金融機関赤字計上はいうまでもなく、金融機関以外の産業でも消費の冷え込みによって影響が出始めています。リストラ、ボーナスカットなど自分たちの生活までにも不況の影が忍び寄ってきており、あのトヨタでさえ赤字決算に陥り、工場では操業停止があいついでいます。
株価はついにバブル崩壊後の最安値を更新し、為替はドル、ユーロなど各国主要通貨に対して急激な円高になっています。
個人投資家の方々の中には、多額の損失を抱えていてどうすることも出来ないといった状況です。株式を手放すしかなく、多額の損失を計上してしまおう、と考える方も多いと思います。
しかし、こういう場合に使える優遇措置がありますので今回はそれをご紹介いたしましょう。

上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除

所有している株式に損失がでていて、その株式を売却して損失が発生した場合「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」が使えます。上場株式等の譲渡損失が発生した場合、その損失を翌年以後3年間繰り越せる優遇制度です。
まず、上場株式等の譲渡損失が発生した場合には、その年の株式等の譲渡益と相殺することができます。
ただし、株式の譲渡損失は、給与所得や事業所得などの他の所得との相殺ができまん。そのため、株式等の譲渡益と相殺しきれなかった譲渡損失は切り捨てられることになってしまいます。
しかし、一定の手続きを行っておけば、その損失が翌年以後3年間は繰り越すことができ、
その繰り越した年で再び株式等の譲渡益と相殺することができます。
したがって、その年度の所得が低くなり、税金の節約になります。住民税や、国民健康保険税が安くなり、結果的には家計全体で株式の損失を取り戻す形になります。

譲渡損失を繰り越すための要件

それではこの繰越控除の適用を受けるための要件をまとめておきます。
まず対象となるのは、上場株式等を証券会社等を通じて売却した場合の譲渡損失になります(この場合の上場株式等には一定の証券投資信託を含みます)。そのため、未上場株式の譲渡損失は繰越できませんし、上場株式等でも証券会社等を通さず、相対取引で行った場合の譲渡損失は対象にはなりません。その上で、以下の3つの手続きが必要です。

 

@上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき、その上場株式等   に係る譲渡損失の金額の計算に関する明細書等の添付がある確定申告書を提出し  ていること
A上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の後の年において連続して確定申  告書を提出していること
Bこの繰越控除を受けようとする年分の確定申告書にこの繰越控除を受ける金額の計   算に関する明細書等の添付があること

 

源泉徴収ありの特定口座を選択している場合には、確定申告不要制度を選択することもできますが、この繰越控除の特例を適用する場合には、必ず確定申告書の提出が必要になりますので、ご注意下さい。

平成13年9月30日以前に取得した上場株式等の取得費の特例

また、その譲渡した上場株式等が平成13年9月30日以前に取得したものである場合には、取得費の特例が使えます。
通常、株式の譲渡所得の計算において、取得費というのは実際の取得価額を指しますが、
平成13年9月30日以前に取得した上場株式等の場合には、平成13年10月1日の終値(http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/denshi-sonota/kabushikijoto/kabuka/01.htm)
の80%と実際の取得価額を比較して、どちらか有利な方が使えます。
この取得費の特例を使って譲渡損失が増えた場合でも、その譲渡損失は繰越控除の対象とすることができます。